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久や ご挨拶

 

私は、このかやぶき民家の1室で69年前に生まれました。

幼少の頃、いろりには、薪が炎をあげて燃えています。「テンドリ」からは、湯気があげています。熊の敷物に、無口な祖父が座っています。囲炉裏の中から、焼けた銀杏を取り出し、私に手渡します。香ばしく、コリッとした食感でした。隣では、祖母が「かきもち」を焼いています。子ども達のおやつになるのです。牛小屋から、ゴツンゴツンと音がします。餌をねだる牛が、角で壁を打っているのです。

 

こんな暮らしが、かやぶきの里では当たり前でした。

「初めて来たのに、何故か懐かしい。」気持ちにさせるかやぶきの里。

みなさんのお帰りをお待ちしています。

「おかえりなさい。さあ、いろりの側へ」

 

冬。雪降る夜は、とても静かで、聞こえるのは薪の爆ぜる音だけです。

目覚めると、外は一面の銀世界。かやぶき屋根は雪をかぶって、まあるくなっています。大雪の日は、学校は臨時休校。子ども達は、手作りのソリを持って里山へと一目散。楽しい楽しい一日の始まりです。

 

夏。夏休み、子ども達は毎日、村の前を流れる由良川で泳ぎます。突然の夕立に追われ、家に帰ります。畳に寝転ぶと、開け放たれた縁側から、涼しい風がながれてきます。いつの間にか、お昼寝。友達の声に起こされ、いつものへぼ将棋が始まります。女の子は、雨の上がった庭先でゴム跳びに興じます。

もちろん、お手伝いもします。その頃、子どもをほめる言葉は、「勉強の出来る子」ではなく、「頑張って家の手伝いをする子」でした。私は、小学二年生から、五右衛門風呂をわかすのが仕事でした。

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